世界の絶景シリーズの最終は「自然遺産」です。
山や川、滝、湖、砂漠などから特に印象に残った景観を選んでみました。
広大な平野や丘陵地帯、延々と続く海岸線、森や林、花が咲き乱れる野原など、景色の良い所は沢山ありますが、画像にすると意外につまらないのです。そうした場所の感動は、現地で味わうしかありません。
【イグアスの滝(ブラジル、アルゼンチン)】
旅行好きの人の話題にのぼるのが「世界三大瀑布」の制覇です。世の中には様々な「世界三大」があり、その専門サイトまであります。日本にも例えば「日本三景」や「三庭園」などがあり、語呂がいいのでしょうね。
その三大瀑布の筆頭にあげられるのがブラジルとアルゼンチンの両国にまたがる「イグアスの滝」です。近づくに連れて落下する滝の轟音が次第に高まってきますが、イグアスとは先住民の言葉で「壮大な水」を意味します。成田を出てから乗り継ぎを含めて28時間、到着した時のあのワクワク感がいいですね。
大小270以上の滝が連なり、最大落差は80m。特にアルゼンチン側から見た姿が壮観です。滝の落下点の近くまでゴムボートで行けるのも魅力です。

【カナイマ国立公園とエンジェルフォール(ベネズエラ)】
今からおよそ20億年前、地球はゴンドワナ大陸と呼ばれる一つの大陸でした。それが約2億5千年前にゴンドワナ大陸の分裂に始まり、今のような大陸の配置になったのは約6500万年前と考えられています。
その大陸の分裂の際に、ギアナ高地は中心軸に位置していたため変化から免れ、20億年前の地球最古の状態が保たれていると推定されています。
長い歳月を経て、地球最古の岩の軟らかい部分は風と雨に洗い流され、硬い岩だけがテーブル状に残りました。これがテーブルマウンテン(テプイ)で、ギアナ高地全体でおよそ100を数えます。高さは高いものは3000mありますが、1000m級のものが多いようです。
テーブルマウンテンの一つアウヤン・テプイは広さが東京23区にほぼ等しく、ここに世界最長の落差979mを誇るエンジェル・フォール(アンヘルの滝)があります。滝の水は落下する前に空中に散ってしまうため、この滝には滝つぼがありません。余りに大き過ぎて、全体の姿を見るには飛行機で見るしかないのです。
このギアナ高地を含む一帯がカナイマ国立公園で、世界遺産に登録されています。ギアナ高地観光の入り口がカナイマ空港で、その直ぐ近くにカナイマ湖があります。
湖畔にはロッジが建てられ、ちょっとしたリゾート気分が味わえます。カラオ川をボートで上ったり、ジャングルトレッキングを楽しんだり、秘境なのにテーマパークみたいなのがとても楽しい所です。
欠点は雨期に行くと水量も豊富だし滝に近づけるが、雨量が多く滝全体を見るのが難しく、乾期は滝は見られるチャンスがあるが迫力に乏しく、滝に近づけないことです。
【ビクトリアの滝(ジンバエブ、ザンビア)】
アフリカ南部を流れるザンベジ川の中流、ジンバブエとザンビアの国境にビクトリアの滝はあります。最大水量が1分間に5億リットル、滝の幅1700m、落差は110mで、全容はヘリコプターで上空から見るしかありません。舞い上がる水しぶきで全身がずぶ濡れになるため、見学は頭から足元まで覆うゴムのコートを着ます。
イグアスと両方を見た人にどっちが大きいかと訊くと、ビクトリア派とイグアス派に分かれます。どちらを先に見たのか、いつの時期に行ったのかといった条件が左右するようです。
【九寨溝(中国)】
九寨溝は四川省の最奥部、岷山山脈の麓にあります。広さは720平方キロと東京23区より一回り広い。とても全部を周ることは出来ません。
急峻な峡谷に沿って大小100余りの湖沼が点在していますが、どれ一つを取っても他と水の色が異なります。午前と午後、晴天と曇天、風の強弱によっても絶えず水の色が変わってゆきます。
水底が透き通って見える透明な水の中に、樹氷のような白い「石灰華」が見られる。これが水のブルーと絶妙なコントラストを描いています。
同じ湖沼でもアルプスの山麓や北欧の景色とは全く異なり、全体が東洋的なのです。それでいて中国独特の水墨画の世界ともまた違う。
あの幻想的な光景は、一度見たら忘れられません。
【カッパドキア(トルコ)】
トルコのアナトリア高原中央部に100平方キロにわたって岩石の台地が広がり、そこにキノコや煙突のような形の奇岩がそびえ、林立する「カッパドキア」、その光景は壮観の一言です。初めてこの光景を見た旅行者は例外なく感嘆の声をあげます。柔らかい地層と硬い地層が重なり合っていて侵食されて生み出されましたこの奇岩群は、世界でもカッパドキアだけだろうと思います。
3世紀半ば、ローマ帝国の弾圧を逃れたキリスト教の修道士たちが、カッパドキアに移り住みました。彼らは柔らかい岩をくり抜いて住居や教会を作ります。次に4~10世紀にかけて、今度はペルシア帝国の迫害から逃れるために、迷路のような地下都市を築きます。従って「カッパドキア」は自然と文化の複合遺産で、西アジア屈指の世界遺産です。
【ナミブ砂漠(ナミビア)】
アフリカ大陸の南西部に位置するナミビア、その大西洋側に沿って広さ5万平方キロにわたるナミブ砂漠が広がります。今から8千万年前に生まれた、世界最古の砂漠です。
この砂漠の特徴は、砂の中に鉄やマンガンなどの金属酸化物を多量に含んでいるため、「赤い砂漠」になっていることです。高さが300m前後の砂山が連なっていますが、それぞれが違った色を呈しています。
その色も、時間と共に変化してゆく様子が見られます。
【ユングフラウ(スイス)】
見所の多いスイスの中でも際立っているのが、世界遺産に登録されている「ユングフラウ‐アレッチュ」です。アイガー・メンヒ・ユングフラウに代表されるアルプスの連峰とアレッチュ氷河を擁しています。欧州で最も標高の高い登山鉄道から見るアイガー北壁や山麓の景色、山頂から見ることができるアレッチェ氷河など、実に素晴らしい景観です。
登山の拠点インターラーケンも氷河湖を抱く美しい町で、ヨーロッパでも屈指の観光地と言えるでしょう。
【フィヨルド(ノルウェー)】
西ノルウェーの海岸沿いには沢山のフィヨルドがありますが、中でも人気が高いのはガイランゲルフィヨルドです。船で進むと切り立った崖が約20キロにわたって続き、エメラルドブルーの水面と、周囲の山肌のグリーンとの対比が実に美しい。
氷河から溶け出した水が滝となってフィヨルドに流れ落ちるさまを見ながら、私の頭の中にはずっとグリーグのピアノ協奏曲のメロディーが流れていました。
【黄龍(中国)】
世界各地に存在する石灰棚の中でも、最もスケールが大きく景観が優れているのは、中国四川省東北部にある「黄龍」でしょう。
玉翠峯から流れ出た水が、石灰をたっぷりと含んだ岩の層を流れ落ち、地面の傾斜にそって棚田のような湖沼群を形成しています。その数は3400ともいわれています。
山頂の標高は3600mに達し、2006年にはケーブルカーが開通しましたが、天候と体調が許せば絶対に徒歩で登ることをお勧めします。黄龍の良さは歩きでしか味わえません。
最大の見所は五彩池ですが、それも下から一つ一つの湖沼を見てこなかったら、感動は半減します。
【サントリーニ島(ギリシャ)】
サントリーニ島はエーゲ海観光の中でも最も人気が高く、イアの町の白と青の建物がエーゲ海ブルーとの美しいコントラストを私たちに見せてくれます。
火山の爆発による地殻変動により現在の島の形が生まれているところから、「アトランティス伝説」との関連も推測されていて、謎を秘めた島という点も魅力的です。
【ミズリーナ湖(イタリア)】
イタリア北部に「ドロミテの真珠」と呼ばれるミズリーナ湖があります。
3000メートル級の山々が連なるドロミテの山岳地帯にあるこの湖は、海抜がおよそ1750メートルの高原にあります。一周およそ2.5kmの楕円形の湖で、どの位置からも美しい景観が見られます。
【ブレッド湖(スロベニア)】
ブレッド湖はユリアン・アルプスに位置する氷河湖です。
湖の北岸には中世のブレッド城があり、湖の中央付近にはブレッド島が浮かんでいます。島には15世紀に建てられた聖マリア教会があり、私たちが訪れた時も結婚式が行われていました。
【レマン湖(スイス)】
フランスとの国境になるスイス最大の湖。アルプスのローヌ氷河からうまれたローヌ河が流れ込んでできた湖で、ジュネーヴから再びローヌ河としてフランスへと流れていきます。湖の南岸はフランス領になります。アルプスと湖が織り成す風景の美しさは、まさに絶景です。
【サハラ砂漠(モロッコ)】
サハラ砂漠は、アフリカ大陸の東西4800km、南北1800kmの広大な範囲に及ぶ世界最大の砂漠です。アフリカ大陸のおよそ3分の1の面積を占めています。
サハラ以北の5か国を訪れましたので、その度にサハラを見ましたが、中でもモロッコで見たサハラが最も印象に残っています。「メルズーガ大砂丘」の頂上にのぼり日の出を見たのですが、その時の美しさは忘れられません。砂丘の下では私たちを乗せてきたラクダが休息しています。