憧れのレバノン・11(国立博物館)

ここで、レバノン内戦について触れたいと思います。
経緯を一通り読みましたが、複雑すぎてうまく整理できません。私の理解の範囲での説明になりますので、その点ご留意のほど。

内戦にいたる背景については、次の通り。
1、第一次世界大戦後に宗主国となったフランスが、レバノン独立運動を抑え込むためにシリアの領土であった地域をレバノンに組み込んだ。いわば人工的な国家になってしまったため、昔からのレバノン人に対して、新たな国民はシリアへの帰属意識が高く、同じ国民としての共通意識が生まれづらかった。
2、レバノンは中東の中では珍しくキリスト教徒が多く、イスラム教徒との割合がほぼ半々だった。さらに内部は細かな宗派に分かれていて、それぞれの内部対立もあり複雑な構成だった。
3、16ともいわれる宗派は独立性が強く、集落、学校、社会風習から軍隊の部隊までは宗派に所属していた。
4、その裏返しとして中央政府や国軍の力が弱く、問題に対処できなかった。

1970年代に入り隣国イスラエルでのPLOによる武力闘争の影響で、PLOを含む多数のパレスチナ難民がレバノンに流入してきた。
これによりキリスト教徒とイスラム教徒のバランスが崩れるのと、PLOが武器を保持していることが反発を生んだ。
そこでキリスト教マロン派は民兵を組織し、米国やソ連から武器を調達し始める。
対抗してイスラム教徒側も同様に民兵を組織し、シリアやイランから武器を調達する。
一触即発の状況の中で1975年に起きたベイルート市内での小さな銃撃戦が、全国に拡大し、マロン派対イスラム・パレスチナの内戦が本格化してゆく。

中央政府は機能マヒに陥り、シリアや多国籍軍の介入も失敗に終わり、加えてPLOやレバノンの過激派ヒズボラに対抗するとしてイスラエルの侵攻や占領があり、宗派同士の対立では「捕虜なき戦争」と称されたほど血で血を洗うような残虐な殺し合いが行われた。
1990年にシリア軍が再侵攻して紛争を鎮圧し、レバノンはシリアの実質的支配下に置かれた。約15年間に及ぶ内戦は一応の終結をみた。

シリア軍の駐留は2005年まで続き、シリアが撤退するまでの約15年間は「パックス・シリアナ(シリアによる平和)」とも呼ばれている。
2005年になって、国民の抗議行動の中でシリア軍が撤退。
2006年にはイスラエルが再侵攻し、南部を占領するが、同年に撤退。
その後も国内では断続的に戦闘があり、2008年になってようやく正常な状態を取り戻す。
長期の内戦や外国軍隊の侵攻により、レバノンの国土は荒れ果てた。
現在は、再開発や観光施設の充実を図るなど経済的回復を進めている。

以上がレバノン内戦の概要です。

観光6日目は首都ベイルート市内で、先ず国立博物館を訪れました。
内戦の主戦場となったベイルートは東西に分裂し、国立博物館は「グリーンライン」とよばれる東西の分離帯の真上に位置していました。
内戦の破壊から収蔵品を守るため、関係者は小さなものは地下の倉庫に、大きなものは周囲をコンクリートで固めて守り抜きました。
そのお陰で、私たちは素晴らしい収蔵品を見ることが出来るのです。
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アルファベットの原形となったフェニキア文字。
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フェニキア文字の解読のきっかけとなったアヒラムの石棺の彫刻。
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石棺に刻まれたフェニキア文字。
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これは別の石棺で、王と王妃を収めたと思われます。
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棺に刻まれたレリーフでは、ホメロスにあるトロイ戦争におけるアキレスの活躍が描かれています。
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その裏側のレリーフでは、アキレスの死を描いています。
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出土した紀元前の彫刻にはエジプトに影響が見られます。
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天使のレリーフは、ローマ時代のものでしょうか。
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墓地から出土した石棺。
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国王の墓から出土した副葬品、兵士を象ったものと思われます。
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貝紫色は巻貝の分泌液を特殊に処理して得られる紫で、フェニキアのティルスで多く生産されたことからフェニキアの紫と呼ばれていました。貴重な交易品です。
カエサルの紫のマントやエジプトの女王クレオパトラの旗艦の帆が、この貝紫に染められていたことは有名です。
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大理石像で、大理石はレバノンでは産出されないのでエジプトから調達したのでしょう。
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その他、いくつか。
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この後はベイルート市内観光になります。
連載は次回が最終回となります。


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Commented by saheizi-inokori at 2018-04-28 09:42
内戦の事情、分かりやすかったです(すぐ忘れますが)。
貝紫、トルコブルー、いい色ですね。
Commented by kanekatu at 2018-04-28 11:11
佐平次様
内戦の記事で書き忘れましたが、シリアは湾岸戦争に参加する条件と引き換えに、アメリカからレバノン占領の許可を得たそうです。
貝紫、確かに素晴らしい色です。品がいいですね。
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by kanekatu | 2018-04-28 04:15 | レバノン | Comments(2)

憂きな中にも旅の空


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